マテリアルズ・インフォマティクスの歴史
「Materials Informatics」という言葉の起点から、データ基盤の整備、そしてGNNによる飛躍まで、MIの歩みをたどります。
「Materials Informatics」の誕生(2005年)
Krishna Rajan, “Materials Informatics,” Materials Today 8, 38 (2005).
2005年、K. Rajan博士は Materials Today 誌に、「Materials Informatics」という論文を報告しています。データベース、機械学習、そして理論を組み合わせて新たな知識を導くという、今のMIにも通ずるアイデアが20年以上も前に報告されており、その先見性には驚くばかりです。
今日のマテリアルズ・インフォマティクスは、データベース × 機械学習 × 理論(計算)の統合という、この論文が示した枠組みの延長線上で発展してきました。
Materials Genome Initiative(2011年)
2011年、米国により実施された Materials Genome Initiative(MGI) により、MIの研究は飛躍的発展を遂げました。データ科学を活用するには、データが必要です。第一原理計算から得られた材料データが収集され、The Materials Project や AFLOW などのデータベースが整備されました。
また、Pythonに基づくデータ解析プラットフォームとして、matminer や pymatgen が開発されました。これらは無料で一般公開されており、現在のMI研究基盤の一端を築いたと言っても過言ではないでしょう。
グラフニューラルネットワークの登場(2017年〜現在)
MGIにより整備されたプラットフォームにより、材料の組成に基づく特性予測モデルが作れるようになりました。しかしこのとき、例えば、同じ炭素原子から構成されるダイヤモンド、カーボンナノチューブ、そしてグラファイト(鉛筆の芯)を区別できません。
2017年、グラフニューラルネットワーク(GNN)に基づく機械学習モデルが複数提案され、この課題が克服されました。GNNでは材料を、原子をノード、原子間相互作用をエッジとするグラフで表現します。構造情報を取り込むことで材料特性予測精度の飛躍的向上を成し遂げ、現在のMI研究の中心的役割を担っています。